raingoesup

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夢の延長

朝、ふいにとても幻想的な場面が訪れた。いや、なんでもないのかもしれないけれど。

 

バスに乗った。いつもと少し違う型のバスで、観光バスの座席を取ってきて路線バスに付けたような車内だった。座席の位置が低いので、窓が上方向に広がっていて、かつ座席の角度がすこし緩やかなものだった。座席にもたれかかってworld's end girlfriendを聴きながら、ぼんやりと窓の外を仰ぎ見る。薄くスモークがかかったようなくすんだ色の窓で、色相彩度明度がそれぞれ少しずつ怠けたような祝日の朝を映す。日の光がやわらかく、とりわけ緑を眼に映す。時間が止まったようなモラトリアムめいた感覚が浮かんでいた。それは終わっていくのが悲しいような、けれど夢想的な中間点をあらわすものだった。ずっと乗っていたかったけれどそれは青春と同様に不可能なもので、バスは止まる。降りてしばらくすると、現実的でそれはそれで怠惰な朝がにじむように広がっていった。