raingoesup

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排水郷

代休。夕日、というほど傾いてはいないけれども、冬独特の、黄色が強い日が差す中を歩いていた。見慣れた景色なのか、もう少し古いような気もしてくる。

まるで何もなかったかのように。くだらない失敗や後悔にまみれた気持ちでそこを歩いたこともなかったかのように。

それは多分物心ついたころ、というのが妥当な時期だと思う。そのころの自分は土地の名前すら知らずに、世界のすべてだった。風景に大した名前などついていなくて、平和にそこが世界の限界だった。そのときに見ていたように、まだ知らなかったときと同じような見え方が気がした。

本当は名前などないほうがいいんだなあと思う。何かと、京都だの滋賀だのというものに惑わされるままに認識して、汚い気持ちをそこになすりつけてしまうけれども。別にそんなものはいらなかった。もっと大切なことがある。どこだってよかったのだ。